傷を治す

2014年3月8日

傷を治す

皆さんは怪我をしたときに、消毒をしますか。
手術を受けると、創の大きい小さいはともかく、必ず創ができます。
ひと昔前までは、毎朝手術後の患者さんの創を消毒して回るのが、外科の日課でした。
しかし最近では、創は消毒しないというのが一般的になってきました。

どうしてなのでしょうか?

手術による縫合創は、滲出液によって48時間程度で被覆されるといわれています。
つまり、それ以降は、外部からばい菌が入り込む余地がほとんどなく、消毒をする意義もなくなってしまうのです。
更に、消毒薬はばい菌を殺すだけでなく、創の治りに必要な、有益な細胞にもダメージを与えてしまうということもわかってきました。

このような理由で、手術後の創の消毒という処置は、ほぼ消滅してしまいました。
また、すでに感染を起こしている創に対しては、膿を出した後に、よく水で洗い流すということが、とても重要になります。ここでも消毒薬を傷口に塗り込むようなことはしないのです。

創が治るためには、湿潤環境が大事だということもわかってきました。
薬局では、キ○パワー○ッドなどの、ちょっと高級な絆創膏も売られており、
こちらは一般にも広がりつつあるようです。

病院では更に進んで、大きく離開した創に対して、局所陰圧閉鎖療法といったものも行われております。
これは、密閉した創部に陰圧をかけることで、創を引き寄せ、細胞の伸展をはかり、治癒を促進させるという治療法です。
創の治療法ひとつとってみても、医療が日々進化していることを、お分かりいただけるかと思います。

手術では、体の中をしっかり治してくることは言うまでもありませんが、見た目も大事だということも心に留めて、また明日からの診療に臨みたいと思います。

土屋剛史

傷をなおす


Posted by 帝京大腸.com|帝京大学医学部附属病院下部消化管外科 東京都板橋区 at 14:35 / ニュース & トピックス コメント&トラックバック(0)

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