外科教育研修プログラム

外科教育研修プログラムの目的

外科教育研修プログラムの目的は、外科学の基礎的ならびに臨床的発展に貢献できる自立した外科医を育成することです。これは単に手術手技の習得にとどまらず、外科的処置法、内視鏡的診断、治療手技などの習得も含めて、総合的能力を得ることを目的としています。
外科医として必要な手術技術習得には時間がかかる上、周術期管理・チーム医療・インフォームドコンセントなどの修練も必要となるため、早期から外科技術を身につけ、優秀な外科医師となってもらうとともに、どこへいっても通用するためにサブスペシャリティーの専門医を取得できるプログラムを構築しています。2年間の初期研修を終了後に後期研修医として学会認定専門医を取得し、その後のサブスペシャリティーの専門医を取得できるプログラムや臨床大学院、社会人大学に入学後に医学博士修得と同時に、学会認定専門医、サブスペシャリティーの専門医を取得できるプログラムなど、多彩で臨機応変なキャリアデザインにも対応できるプログラムを提供しています。

下部消化管外科

当科の対象は、下部消化管(空腸、回腸、結腸、直腸、肛門)の疾患で、がん、炎症性腸疾患(憩室炎、虫垂炎を含む)が多くなっています。
当科の特徴は、検査、手術から再発予防の化学療法、再発治療の化学療法、緩和医療に至るまで一貫した診療体制をとっていることで、その結果、手術ばかりでなく、内視鏡検査、注腸造影検査、化学療法、緩和医療など幅広い領域の知識、技術、経験を得ることができます。
早期癌には機能温存・縮小手術、および内視鏡下手術を採用し、術後quality of life(QOL)を維持する治療を行っております。進行癌には手術とともに積極的に化学療法、放射線療法などを併用しております。さらに、良性疾患には、内視鏡下手術を含む低侵襲手術を行い、QOLの維持・向上を目指しております。
また、虫垂炎、憩室炎をはじめ多数の外科系の救急疾患に対しても対応しており、専門医・指導医のもとに研修を積むことができます。

下部消化管外科における研修

帝京大学下部消化管外科の特徴のひとつは、高い専門性にあります。指導医・専門医(6名)が指導にあたるばかりでなく、スタッフは大腸癌研究会の各種委員会のactive memberであり、大腸癌治療ガイドラインや大腸癌取扱規約の改訂などに直接関わり、日本の大腸癌治療において指導的役割を果たしております。
研修医、大学院生は、教育的な配慮のもとに、良質な専門的医療と高い医療水準の個別の指導が行われています。当科には、院内で研修を受けた医師が多数スタッフとして在籍しており(野澤講師、山田助手、端山助手など)、その経験に基づいた教育を提供できる環境が備わっています。

指導体制

教授  ○橋口陽二郎
准教授  松田 圭二
講師   野澤慶次郎
講師   石原聡一郎
助手   山田 英樹
助手   端山 軍

外科医局全体での結紮・縫合トレーニング、超音波検査、CV挿入、内視鏡検査実習やバーチャルシミュレーターによる手術トレーニングにより外科臨床に必要な手技の習得を目指します。
また、下部消化管外科独自に、ドライラボ、ウエットラボにおける腹腔鏡手術トレーニング等を行っています。

研修スケジュール

(ローテーション例)

4~6月 7~9月 10~12月 1~3月
1年次 上部外科 下部外科 心臓外科 肝胆膵外科
2年次 呼吸器外科 小児外科 ER・上部・肝胆膵・下部・乳腺外科 ( 選択 )
3・4年次 下部消化管外科 ( 選択 )

外科プログラムロ-テ-ション

*外科G:上部消化器外科、下部消化器外科、肝胆膵外科、呼吸器外科、乳腺・内分泌外科

<後期研修・大学院>

当院におけるレジデントコース(後期研修)は、卒後2年間の初期臨床研修を終了した後、専門学会の認定医、専門医の取得を目指す医師を対象とし、研修期間は3年間で、認定医、専門医として必要な基本的診療能力を身につけることを目的としています。
外科レジデント研修プログラムでは、1枠3ヶ月毎のローテーションを基本とし、1.2年次に必須グループのローテーションを行ないます。必須グループとは上部消化管外科、肝胆膵外科、下部消化管外科、乳腺・内分泌外科、呼吸器外科です。さらに、3・4年次は原則的に希望科に固定して研修しますが、さらに広い範囲の研修継続を希望する場合は外科各科をローテーションすることも可能です。

以上により、総合的な外科の診療能力、手術経験(助手)をつむとともに、各科の基本的手術の術者を一通り経験することを目標としています。

「外科専門医」を取得する際に必要な各種疾患の症例数、手術経験数も3年間のレジデント研修で十分に経験できます。

スケジュール

下部消化管外科週間スケジュール

午前 午後 実習等
月曜日 教授回診 手術 手術 キャンサー
ボード(注1)
火曜日 下部症例
検討会
手術 内視鏡検査・治療 シミュレーション実習
(注2)
水曜日 症例
カンファ
手術 手術 Dry Labo実習
(注2)
木曜日 症例
カンファ
内視鏡検査・治療
金曜日 症例
カンファ
内視鏡検査・治療
土曜日 症例
カンファ
縫合実習(注2)

(注1)キャンサーボード:外科・内科・放射線科・病理合同:1回/月

(注2)実習:1回/月:内視鏡、CV挿入、超音波、縫合実習

年間スケジュール

春の学会:日本外科学会総会、日本消化器病学会、日本外科系連合学会、手術手技研究会、日本緩和医療学会等
夏の学会:日本消化器外科学会、日本臨床腫瘍学会、
秋の学会:JDDW、日本癌治療学会、日本大腸肛門病学会、日本臨床外科学会、
冬の学会:日本内視鏡外科学会
トレーニング:ドライ・ウェットラボを年間数回

キャリアデザイン

長期的展望に立脚した後期臨床研修(専門研修)・大学院教育からの長期的で一貫した研修により、優れた専門医及び臨床医を養成しています。個人個人のキャリアデザインに基づいた研修プログラムコースを柔軟に構成し、最終的にはサブスペシャリティーの専門医資格の取得を目指す。さらに当病院の特徴である幅広い診療症例を経験し、さらには外部施設研修を経験することで、医療者としての高い総合能力を身につけてもらう。
目標となるキャリアデザイン
大学教授、公立病院の外科部長
一般病院の外科長
実家を継ぐ
新規開業(肛門科、消化器科など)
出産、育児に専念する時期が欲しいetc.
上記の多種多様なキャリア・デザインに応えるカリキュラム作成を行っています。

取得できる専門医資格

日本外科学会
日本消化器外科学会
日本大腸肛門病学会
日本消化器内視鏡学会
日本消化器病学会
日本内視鏡外科学会 など

キャリアパス

キャリアパス(モデルコース)

キャリアパス(モデルコース)

研修計画

手術研修
閉創時の糸結びの実施
1 ・ 2年目   S状結腸癌・良性疾患の術者
腹腔鏡手術の助手、内視鏡医
3 ・ 4年目 結腸半切除の術者
腹腔鏡手術・直腸手術の術者
検査研修
検査に立ち会い実際を学ぶ
1年目     胃カメラ検査の習得
注腸検査,3D-CT検査の習得
2年目     大腸内視鏡検査(外勤先での研修を含)
4年目     治療的内視鏡(ポリペク,EMR,ESD)を習得

研修7-8年目以降の希望者には、外部施設における1年~2年の後期高度臨床研修の機会を与え、教育職、勤務医を意識したトップクラスの下部消化管外科医の育成、あるいは開業医としての活動を意識した肛門科専門医等の育成を行います。