クローン病とは

Q1どのような病気ですか?

クローン病とは原因不明の病気であり、潰瘍性大腸炎とともに炎症性腸疾患
(Inflammatory Bowel Disease:IBD)に分類され、厚生労働省の特定疾患治療研究対象疾患に指定されています。遺伝的素因や血流障害などが原因としてあげられていますがはっきり証明されたものはありません。
免疫系の異常反応が一因と想定されています。

Q2 患者数はどのくらいですか?

年々増加の一途をたどっており、2009年には30891人の患者さんが本邦では登録されています。それでも欧米に比べると10分の1前後です。
主に10020歳代の若年者にみられ、男性と女性では2:1で男性に多く見られます。

Q3 どのような症状ですか?

口腔内から肛門まで全消化管に発生し、中でも、特に小腸や大腸に炎症や潰瘍が起こることが多く、小腸の末端部が好発部位とされています。
症状は腹痛、下痢、血便、発熱、肛門病変、体重減少、全身倦怠感などが主なものです。肛門病変としては痔瘻、裂肛、肛門周囲膿瘍などが生じます。他にも口腔内アフタ、関節炎、虹彩炎、結節性紅斑などの皮膚の合併症を生じることもあります。

痔瘻の画像所見

クローン病

痔瘻部のMRI画像

クローン病

肛門内から臀部まで通り道ができている.

Q4 検査と診断はどのようなものですか?

採血検査では貧血、白血球減少、血小板増加、赤沈亢進、CRP上昇、低タンパク、低コレステロール血症、低ナトリウム血症などがみられます。
大腸内視鏡検査では、アフタ様潰瘍、縦走潰瘍、敷石像、病変が非連続性に飛び飛びに現れる傾向がある飛び越し病変を確認することができ、生検結果にて非乾酪性類上皮細胞性肉芽腫が証明されると、より確実になります。
小腸造影検査では狭窄病変がないかを確認します。
注腸造影検査では非連続性病変、腸管狭窄、腸管肥厚などを確認します。

大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査

縦走潰瘍

アフタ様潰瘍

アフタ様潰瘍

敷石像

敷石像

小腸造影検査

小腸造影検査

狭窄病変が見られる

注腸造影検査

小腸造影検査

横行結腸に狭窄性病変がみられる

Q5 重症度判定はどのようにするのですか?

クローン病の重症度判定にIOIBD指数というものがあり、クローン病の炎症の状態を見ることができます。10項目あって、1項目1点とし、合計点数を
スコアとし、点数が高いほど重症です。項目は以下の通りです。

1.腹痛(
2.1日6回以上の下痢や粘血便(
3.肛門部病変(
4.瘻孔(
5.その他の合併症(結節性紅斑、ぶどう膜炎、関節炎など)(
6.腹部腫瘤(
7.体重減少
8.38℃以上の発熱(
9.腹部圧痛(
10.貧血(10 g/dl以下の血色素)

寛解 :スコアが0または1で、血液検査で赤沈値、CRPが正常化した状態
再燃 :スコアが2以上で、赤沈値、CRPが異常。

Q6 どのような経過をたどるのですか?

再燃、再発を繰り返し、慢性の経過をたどります。
完全治癒は困難であり、寛解時期を維持することが大切です。

Q7 治療法はどのように行いますか?

栄養療法やサラゾピリン、ペンタサ、ステロイド剤、インフリキシマブ(レミケード)などの薬物治療を中心とした内科的治療が一般的です。
特に、レミケードの導入により内科的治療の結果が向上しています。
腸管狭窄、穿孔、大量出血、膿瘍形成が生じた場合は手術治療が必要になることがあります。
食事は低脂肪、低残渣の食事を推奨します。
またクローン病では癌を合併することも多く、定期的な検査が必要です。