大腸癌治療の基本方針

治療法の選択

治療の原則は、大腸癌研究会編の「大腸癌治療ガイドライン」の最新版に基づいて行います。
術前検査によって患者さんごとの大腸癌の進行度を評価し(大腸癌の評価)、さらに持病をお持ちでないか、お持ちならどれくらい手術に差しつかえるかを検討いたします(耐術能、手術リスクの評価)。
手術術式の選択につきましての優先順位は、第1:安全な手術であること、第2:癌の治癒を目指す手術であること、第3:できるだけ低侵襲の手術であること。としております。手術可能と考えられましたら、患者さんごとに、まずガイドラインに基づく治療方法を提示し、その他の選択肢があればそれも同時に説明します。その中で、大腸癌の状況と患者さんの状況から、どれがお薦めであるか、どのようなリスクがあるかをお話しします。その上で、患者さん・ご家族のご希望をお聞きし、十分に話し合い、納得していただいた上で手術を行っております。

腹腔鏡下手術

結腸癌にも直腸癌にも腹腔鏡下手術を行っております。
早期癌の場合は、内視鏡的に切除できない場合、あるいは、内視鏡的に切除できた場合でも追加腸切除が必要な場合には、痛みが少なく、傷も小さくてすむ腹腔鏡下手術を第一選択としております。進行癌の場合には、根治性(癌の治癒)を最優先として検討し、腹腔鏡下手術が妥当と考えられる場合には腹腔鏡手術、開腹手術の方が治療上有利と考えられる場合はそちらをお薦めしております。現在のところ全体の70%以上の患者さんが腹腔鏡手術となっております。

術前化学放射線治療

進行直腸癌には、放射線照射と抗癌剤を組み合わせた術前化学放射線治療等の集学的治療を行って根治をめざしております。術前の集学的治療によって腫瘍が縮小し、自然肛門が温存できる場合もあります。術前化学放射線治療をお受けになった患者さんにつきましても、腹腔鏡下手術を積極的に施行しています。

人工肛門

肛門に近い直腸癌については究極の肛門温存手術である内括約筋切除(ISR)を行って、出来る限り自然肛門が温存できるように努めております。一方、手術リスクが高い場合には一時的な人工肛門を造設し、後日(一般に3ヶ月後)人工肛門を閉鎖する二期的手術によって患者さんの安全を図る場合があります。

術後補助化学療法

Stage IIIの患者さんには再発予防のための術後補助化学療法をお薦めしています。

再発した場合

再発された場合、再発した部位を手術によって切除し、治癒をめざします。
切除できない場合は、抗癌剤による化学療法によって切除可能な状態にして根治手術すること(conversion therapy)をめざします。
どうしても切除できない場合は、化学療法によって病気の進行を遅らせる治療を行います。

初診時から全部取り切れないくらい進んだ大腸癌の場合

大腸癌による症状がある場合には、その症状を緩和するための姑息的な手術を行うことがあります(腸切除、人工肛門造設など)。
抗癌剤による化学療法によって切除可能な状態にして根治手術すること(conversion therapy)をめざします。
どうしても切除できない場合は、化学療法によって病気の進行を遅らせる治療を行います。

緩和医療

患者さん・ご家族の希望により、病診連携によって緩和医療専門施設、在宅医療専門医に適切に紹介するばかりでなく、当科での緩和医療を希望される場合には外科の病棟にても適宜対応しております(当科手術症例)。当院には緩和医療の専門医も常勤しており、連携をとって治療いたします

下部消化管外科では、患者さんが安心して治療を受けられる最良の医療を心がけております。