進行大腸癌に対するステント治療

消化管狭窄に対する内視鏡的ステント治療

 大腸狭窄の新しい治療法として,大腸ステントを利用して狭窄を解消する方法が2012 年に保険適用となりました.

 ステントとは,形状記憶の網状金属の管(expandable metallic stent)です.ステント治療では,閉塞した状態の腸の狭いところを大腸内視鏡で確認しながらステントを挿入することにより,ゆっくりと安全に形状記憶の網状金属の管が開いてゆくことで,狭く閉塞した腸が開いてゆきます.数日すると大腸の内腔が回復し,食事がとれるようになることを期待するというものです.もちろん自力で排便もできるようになります.

 以前は大腸癌により腸閉塞を合併した患者さんは,全身状態が悪く,腹部は膨満しており,良好な前処置が困難なため,手術前に充分な検査が出来ず,口側の病変を見逃したり,長期の禁食状態が続いたりしました.もちろん全員が上手くゆく訳ではありません.出血や穿孔,脱落などの合併症も報告されています.しかし,成功すれば9割以上の患者さんで,腸閉塞症状が改善したと報告されています.

 当科においても積極的に新しい治療の選択肢として考え,ステント治療を行っております.腹痛などの症状が出た場合でも,心配しないでまずは早急に,病院を受診してください.

ウォールフレックス大腸用ステントの写真
ステントイメージ図

大腸内視鏡イメージ図

ステント挿入前の様子
①ステント挿入前
腫瘍性病変と内腔の閉塞の軽減
ステント挿入時
②ステント挿入時
便の流出が始まる
ステント挿入直後
③ステント挿入直後
便汁の大量流出と膨満