単孔式腹腔鏡下手術

 単孔式腹腔鏡下手術とは、通常行われている標準的な腹腔鏡下手術(多孔式)よりも、さらにきずが少ない手術です。標準的腹腔鏡下手術では腹部に4~5ヶ所のあな(孔)をあけ、そこから筒(トロッカーと呼びます)を挿入し、専用の機器を使用して、おなかの中の手術を行います。単孔式腹腔鏡下手術ではこのあな(孔)を1ヵ所のみで行ってしまう手術法なのです(図.1、2)。ときに、補助器具として臓器を吊り上げる針や糸を別の個所に追加することもあります。腹部にできるきずが少ないため、手術後の痛みが少なく、早期の回復、早期の日常生活への復帰を可能にしました1)。きずはおへその部分のみですので、整容性に優れ、1年ほど経過すれば、手術したことさえわからなくなるほどきれいになる患者さんもいらっしゃいます(図.3)。

 日本では、2009年ころから普及し始め、現在消化器外科の分野では、胆石症や大腸がん、一部の胃がんなどに行われています。大腸がんの中では、上行結腸がん、S状結腸がん、上部直腸がんなどに対し、がんの大きさや全身状態などから総合的に判断して、適応を決めています。ただでさえ、腹腔鏡下手術を安全に行うためには専用のトレーニングが必要ですが、この単孔式では1ヵ所から専用のカメラ(腹腔鏡)、器具をおなかの中に入れて行う方法のため、非常に難易度が高く(図.4)、さまざまな工夫が必要です(図.5)。当院では技術認定医の管理下に、症例を慎重に選択し、安全に施行いたします。

 この単孔式腹腔鏡下手術についてのお問い合わせは、帝京大学医学部附属病院、下部消化管外科外来(金曜日午前)にて承っております。

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参考文献 1)Fujii S, Watanabe K, Ota M, Watanabe J, Ichikawa Y, Yamagishi S, Tatsumi K, Suwa H, Kunisaki C, Taguri M, Morita S, Endo I Single-incision laparoscopic surgery using colon-lifting technique for colorectal cancer: a matched case-control comparison with standard multiport laparoscopic surgery in terms of short-term results and access instrument cost. Surg Endosc26, 1403-1411, 2012