腸管脂肪腫
一般に脂肪腫というと、皮下にできる軟らかい腫瘤を思い浮かべると思います。実は、腸管にも脂肪腫ができることがあるのです。腸管脂肪腫は比較的まれな疾患で、消化管腫瘍のうちの4%程度といわれています。部位別では、大腸、小腸、胃の順で多く、大腸では、上行結腸や盲腸などの右側結腸に多く、小腸では回腸に多いとされています。また、大腸脂肪腫には10%強の大腸癌合併が認められたとの報告もあります。
症状
腹痛や便通異常、下血といった消化器症状を呈することが多いです。サイズの増大に伴って、症状の発現率は高くなります。2㎝以上で、何らかの症状を呈するようになり、4㎝を超えると腸重積を起こす頻度が高くなります。ところで腸重積とは、腸管が腸管に嵌まり込んでしまうことです。成人の腸重積では、腫瘍が先進部になっているものが多いといわれています。
検査
内視鏡検査では、正常粘膜に覆われた表面平滑で黄色調の腫瘤として観察されます。軟らかい腫瘤であるため、鉗子で押すと凹み、離すと戻るといった、cushion signが特徴的な所見です。度重なる重積等の刺激によって、表面にびらんや潰瘍を形成することがあり、通常の大腸ポリープとの鑑別が困難な例も存在します。
CT検査では、腫瘤が脂肪と同じCT値を示すため、質的診断に有用です。
治療
基本的には良性腫瘍であるため、無症状なものは経過観察でよいと考えられます。サイズの大きなものや、症状を有するものには、切除を考慮します。2~3cmまでのものでは、内視鏡的切除が可能とされています。その一方で、穿孔等の危険性も指摘されています。サイズの大きいものでは、外科的な切除を行います。最近では、腹腔鏡下での切除例も増えてきています。