診療FAQ

FAQ 1

Q.帝京大学下部消化管外科で治療を受けるメリットは何ですか。

A: 1. 大規模中核病院の外科診療の場合、手術患者さんへの対応が中心となり、手術以外の検査、抗癌剤による化学療法、緩和医療などは他の診療科あるいは病院に頼らざるをえないことが多いのに対し、当科では、担当医が一貫して検査、手術、化学療法、緩和医療など診療全般に関与していきます。患者さん・ご家族と十分に話し合い、納得していただいた上で手術を行っております。

2. 希望される場合には入院して術前検査をまとめて受けることができますので、遠隔地の方は検査の為に何回も足を運ぶ必要がありません。

3. 痛みが少なく、傷も小さくてすむ腹腔鏡手術を第一選択としております。

4. 進行直腸癌の患者さんは、放射線照射と抗癌剤を組み合わせた術前化学放射線治療等の集学的治療を受けることが可能です。

5. 肛門に近い直腸癌については究極の肛門温存手術である内括約筋切除(ISR)を行って、出来る限り自然肛門が温存できるように努めております。

6. 希望される場合には術後の化学療法も、手術時の担当医が適宜入院にて行っております。一方、外来通院を希望される場合には、外来化学療法室などを利用して外来通院で安全に行う体制も整えております。

7. 竣工して3年目の新しい病院ですので、大変きれいで、快適な入院生活が送れます。11階の病室からの眺望も最高です。

FAQ 2

Q. 腹腔鏡下手術の長所と短所を教えて下さい。

A:  ■長所

1.傷が小さい
2.痛みが少ない
3.早期離床が可能(術後早いうちから歩行が可能)
4.入院期間が短い

 テレビカメラが先端についた内視鏡を挿入し,さらに細い手術器具を挿入し,テレビ画面をみながら手術を行います.お腹を大きく開く従来の手術と異なり,傷は小さくすみます(傷が全くないわけではありません).傷が小さいので,術後の痛みも少ないです.したがって,術後の早いうちから歩行が可能となります.手術の内容にもよりますが,入院期間の短縮も期待されます.

■短所

1.手術時間が長い
2.視野が狭い
3.手で操作する範囲が限られる

 お腹を大きく開いて直接手で臓器を持ちながら行う開腹手術と比べると,腹腔鏡下手術では直接臓器に触ることは少なく,ほとんどの操作で器具を使って進めますので,手術時間が長くなりがちです。例えば,開腹手術は丸いビー玉を手でつかむようなもので,腹腔鏡下手術は箸でつまむようなものです.また,内視鏡のテレビカメラで写るところしか見られませんので視野が狭いです.傷が小さいので手で操作する範囲は限られます.

FAQ 3

Q.遠隔地に住んでいますが治療は受けられますか。

A: 当科では、希望される場合には術前検査および退院後のフォローアップ検査を入院してまとめて行うことが可能ですので、遠隔地の方でも何回も足を運ぶ必要がありません。術前・術後の化学療法も入院して行うことができます。また、希望される場合には、患者さんの地元の病院・診療所と連携して術後のフォローアップを行うこともできます。手術日はできるだけ早目に決めておりますので、ご都合に合わせやすいと思います。

実際、長野県、茨城県、福島県、静岡県等の比較的遠隔の地域在住の患者さんがいらっしゃっております。

FAQ 4

Q. 直腸癌に対する術前化学放射線療法の長所と短所を教えて下さい。

A: 術前化学放射線療法は直腸癌治療の最大の問題点である術後の局所再発(癌摘出を行った部分やその近くに癌の再発が起こること)を減らす目的で、手術の補助療法として行う治療法で、欧米では標準治療となっています。

■長所

① 治療が難しく、症状がでやすい術後の局所再発が減ります。
② 病巣が小さくなったり、癌の周囲への広がりが小さくなったりすることで切除する範囲を縮小した体への負担が少ない手術(自律神経温存手術、腹腔鏡手術など)ができることがあります。
③ 困難であった肛門を残す手術が可能となる場合があります。

■短所

① 術前化学療法には約一月半かかり、また治療費の負担が増えます。
② 下痢などの副作用がでる場合があります(重い副作用は少ないです)。
③ 肛門を締める筋肉(肛門括約筋)などの健常組織に放射線が当たることで働きが低下する場合があります(時間とともに改善することが多いです)。
④ 患者さんによっては効果が弱い場合があります。

さらに詳しい点については、「診療の特色」の欄をご参照ください。

FAQ 5

Q. 下痢と便秘を繰り返します。大丈夫でしょうか?

A: 過敏性大腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)の可能性があります。
大腸の運動および分泌機能の異常で起こる病気です。一般人口の10〜20%とされ、女性に多く見られます。内視鏡検査などを行なっても異常は見られませんが、下痢や便秘、ガス過多による下腹部の張りなどの症状が起こります。

この症状は消化管運動異常、消化管知覚過敏、精神的なストレスや生活の乱れが原因とされます。またセロトニンという神経伝達物質が関係していると指摘されており、ストレスにより腸内のセロトニンが分泌されると腸の蠕動運動に異常が生じIBSの症状が起きると現れるとされています。

下痢型、便秘型、交代型に分けられます。治療は整腸剤やセロトニン受容体拮抗薬内服や緩下剤などによるものがあります。他は生活、食事の改善やストレスを溜めないようにすることを推奨します。
いずれにしても、大腸癌や炎症性腸疾患でも類似の症状を呈することがありますので、大腸内視鏡検査をお受けになることをお薦めします。

FAQ 6

Q.便に血が混じっていました。どうすればよいでしょうか?

A: 下血、血便の原因には痔やポリープなどの良性疾患だけでなく、大腸癌のような悪性疾患もあり得ます。専門医を受診し、肛門の診察や必要に応じ大腸内視鏡検査などの各種検査を受けられることをお薦めします。

FAQ 7

Q. 健康診断で便潜血陽性と言われました。どうすればよいでしょうか?

A: 便潜血陽性の原因としては消化管(食道、胃、十二指腸、小腸、大腸)からの出血または痔の可能性があります。便潜血陽性の場合に大腸内視鏡や注腸造影検査を行なって、大腸癌が見つかる頻度は約3%と言われています。一方で、大腸癌があっても便潜血陽性にならない(偽陽性)は、約30%と言われています。陽性の場合は内視鏡検査を受けられることをお薦めします。

FAQ 8

Q. 大腸内視鏡検査に伴い起こり得る合併症には何があるのでしょうか?

A: 大腸内視鏡検査の前には前処置といい下剤を内服します。まれに腸閉塞や腸穿孔を起こすことがあります。検査時には内視鏡を大腸に挿入する際に、腸管がこすれたり、伸びたりして出血や腸穿孔を生じることがあります。またポリープ切除後は特に出血や腸穿孔の頻度は高くなります。
1995年の日本消化器内視鏡学会の全国集計では0.0515%(約2000人に1人)で何らかの合併症が報告されています。0.001%(10万件に1件)の頻度で死亡例も報告されています。検査は十分な注意を払い施行していますが、万が一、合併症が生じた場合は入院や緊急の処置、手術が必要になることもあります。

FAQ 9

Q. 注腸造影検査とは何ですか?

A: 注腸造影検査とは、肛門から造影剤と空気を入れ大腸壁を造影し、大腸の病気の有無を診断する検査です。大腸内視鏡検査の代替にはなりますが、内視鏡のように病変を直接見ることができません。ポリープや大腸早期癌や小さな進行癌は描出されない場合もあります。
 しかし、大腸の形を見たり、正確な病変の位置を把握したり、壁深達度を診断するためにはとても重要な検査であり、有用な術前検査の一つです。当科では術前検査として注腸造影検査、大腸内視鏡検査を共に施行し、治療方針を決定づけることに役立てています。