単孔式腹腔鏡下虫垂切除術とは?

2015年2月4日

虫垂炎に対する新しい手術:単孔式腹腔鏡下虫垂切除術

みなさんは「もうちょう」とか「もうちょうえん」と呼ばれる病気をご存じと思います。この「もうちょう」という病気は、正確には大腸の一部分である盲腸の尾側にぶら下がるように付いている虫垂という部分が炎症を起こして腹痛をきたすものです。
よって正確には虫垂炎といいます。虫垂炎は抗生物質投与により手術をせずに治る軽症例から、虫垂が破裂して腹膜炎となり全身状態が悪化する重症例まで程度はさまざまです。古い話で恐縮ですが、昭和46年には当時現役横綱の玉の海が虫垂炎手術後に肺塞栓症の合併症で亡くなっています。
現代では、死亡に至るような重症例は極めてまれです。しかし今でも腹痛の患者さんを虫垂炎と診断し、自分が主体となって手術を行うことができたら、とりあえず外科医として認められるといったような、虫垂炎は外科医にとって重要な疾患であることに変わりありません。

この虫垂炎の外科治療に最近、新しい方法が行われるようになりました。それは腹腔鏡下手術であり、その中でもさらに進化した単孔式虫垂切除術です。腹腔鏡下手術は消化器外科の分野では胆嚢摘出術に始まり、大腸、虫垂、胃、食道、肝臓、膵臓、ヘルニアなど多くの臓器の疾患に行われるようになりました。腹腔鏡下手術のメリットは、従来の開腹手術と比べて傷が小さく、術後の痛みが少ない、日常生活への復帰が早い、術後の癒着が少ないなどがあります。
虫垂炎手術は従来の開腹手術でもきずは5cmほどであり、胃や大腸を切除する開腹手術に比べて決して大きいものではなく、痛みも強くありません。しかし5cmの小さなきずから観察できるのは虫垂、盲腸、小腸の一部であり、おなか全体を見ることはできません。
腹腔鏡下手術ではおなか全体を観察することが可能です。虫垂炎と似た症状の疾患として結腸憩室炎、婦人科疾患、メッケル憩室炎などがあります。腹腔鏡下手術は単にきずが小さいことのみでなく、鑑別診断を確実にできるメリットがあります。

そして2009年ごろから急速に普及してきた手術が単孔式腹腔鏡下手術です。これは通常の腹腔鏡下手術では複数の孔が必要ですが、単孔式では腹腔鏡や専用の器具を1つの孔からおなかの中へ挿入し、手術を行うという方法です。単孔式手術の長所は、腹腔鏡下手術が持つ様々な長所に加え、整容性にも優れていることです。もともとへそは、生まれて初めてできるきずです。それをもう一度切ることになるので、新しくきずが増えることになりません。きずは数か月経過すれば手術したことさえわからなくなります。

単孔式虫垂炎手術の詳細は診療の特色の、「単孔式腹腔鏡手術」をご参照ください。

単孔式腹腔鏡下虫垂切除術


Posted by 帝京大腸.com|帝京大学医学部附属病院下部消化管外科 東京都板橋区 at 11:40 / ニュース & トピックス コメント&トラックバック(0)

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