開腹手術

近年、腹腔鏡下手術の普及が進み、ともすれば開腹手術が軽視されがちな風潮すら垣間見えます。確かに腹腔鏡下手術は低侵襲で開腹手術と同等の手術ができる点で利点も多く、当科でも腹腔鏡手術を大幅に取り入れ、初発大腸癌に対して実数として年間100例以上、腹腔鏡手術率も70%以上に達しております。

当科では、敢えて開腹手術をしなくても腹腔鏡下手術で安全確実に目的を達成できる、あるいはむしろ腹腔鏡手術の方がよいと考えられる患者さんを慎重に選択して腹腔鏡手術を行っています。なぜなら、すべての病態について腹腔鏡手術が最善の治療であるわけではなく、とくに癌が局所で進行し、高度なリンパ節転移を来したり、周囲の臓器に浸潤している場合には、癌の根治性と手術の安全性を考えた場合に、開腹手術を行った方がよいと考えられる場合があるからです。そして、このような高度進行例においては、癌を取りきることができるかどうかが直接患者さんの生死を分ける場合が多々あります。すなわち、開腹手術の重要性は現在でも微塵も変わっていないのです。

いや、それどころか、腹腔鏡下手術が普及しつつある昨今こそ、しっかりとした開腹手術の行える診療科であるかどうかが逆に重要性を増していくのではないかと思われます。

当科では、高度進行癌に対しては、術前化学放射線治療などの集学的治療を用いており、骨盤内臓器全摘術などの高度な技術を要する大手術も多く手がけており、進行した癌の患者さんにおかれましても安心してお任せいただけると思います。