ISR(内肛門括約筋切除)

従来、肛門に非常に近い(腫瘍下縁が肛門縁より4~5cm以内)直腸癌に対しては永久的な人工肛門をつくる直腸切断術(マイルス手術)が行われてきました(図1)。このような永久的な人工肛門を避けるべく、究極の肛門温存手術として、肛門括約筋(肛門を締める筋肉)のうち、内側の括約筋である内肛門括約筋は切除するが、外側の括約筋である外肛門括約筋を残して吻合する術式(intersphinctericresection:ISR)が1994年にオーストリアで報告され、当院でも積極的にこの術式に取り組んでいます。手術方法は、まずお腹から直腸剥離を肛門挙筋レベルまで行い、ついで肛門側より内肛門括約筋の部分~完全切除を行って癌を摘出します(図2)。次に肛門からの経肛門的操作で口側結腸と肛門を吻合します(図3)。場合により外括約筋の部分切除術(ESR)を行うこともあります。当科では、可能な限り腹腔鏡下手術を取り入れ、低侵襲となるように務めております。ただし、ISRは内括約筋切除を伴うため、術後の肛門機能低下の可能性があり、さらには、局所での癌再発のリスクを高める可能性があります。したがって、この術式は、術後に残る肛門機能と癌再発のリスクを念頭において施行可能かどうかを慎重に検討する必要があります。ですから、誰にでも施行できるという訳ではありません。あくまでも患者さんにとってプラスになるかどうかを十分検討し、患者さんと話し合った上で決定しております。また、癌の再発に対する厳重な経過観察はもちろんのこと、術後肛門機能の評価も行っていく必要があります。

一方、永久的な人工肛門を造設しなければならないご病状の場合でも、術後は担当医および専門看護師(WOCナース)が人工肛門などについての生活支援をきめ細く行っていますのでご心配ありません。
是非一度ご相談下さい。

isr1

図1

isr2

図2

 

isr3

図3